天井クレーン・テルハ・門型クレーン・ジブクレーンの違い|工場に最適なクレーンの選び方を4形式で比較

工場や倉庫で重量物を運ぶ設備といえば「天井クレーン」が真っ先に思い浮かびますが、実際の現場では「テルハ」「門型クレーン」「ジブクレーン」など、さまざまな形式が使い分けられています。これらは見た目が似ているものもあり混同されがちですが、法令上は別の形式として分類されており、運べる荷の重さ、カバーできる作業範囲、必要な届出、そして設置工事の規模までが大きく変わります。本記事では、4つの形式を同じ比較軸で整理し、自社の現場にどのクレーンが適しているのかを判断できるよう解説します。

クレーンは法令上4つの形式に大別される

クレーンには数多くの呼び名がありますが、まず押さえておきたいのは、クレーン等安全規則では外観の形式によって「テルハ」「天井クレーン」「橋形クレーン」「ジブクレーン」の4つに大分類されているという点です。この4形式が、さらに設置状態やガーダの形式、走行方法の違いによって細かく枝分かれしていきます。

ここで注意したいのが呼称の対応です。現場で「門型クレーン」「ゴライアスクレーン」と呼ばれているものは、**法令上の正式名称では「橋形クレーン」**にあたります。カタログや見積書では「門型」、届出書類では「橋形」と表記が分かれることがあるため、社内で検討する際は同じものを指していることを確認しておくとスムーズです。

つまり、天井クレーンとテルハ、門型クレーン、ジブクレーンは「大分類が違う別物」であり、どれかがどれかの一種というわけではありません。以下では、この4形式を同じ切り口で見ていきます。

4形式それぞれの構造と特徴

テルハ

I形鋼などの1本のレール(単軌)に電気ホイストを懸垂した、最もシンプルな形式のクレーンです。

構造と動作: レールに沿った「走行」と、荷を上下させる「巻上」の2方向のみに動きます。天井クレーンのような左右方向の「横行」がないため、動けるのはレールの真下の直線上に限られます。

つり上げ荷重の目安: 0.5t〜2.8t程度の軽荷重帯が中心です。

メリット: 既存の建屋梁に吊り下げる形で設置できる場合が多く、4形式のなかで最も導入コストと工期を抑えられます。構造が単純なため、日常の保守負担も軽くなります。

注意点: 決まった直線しか運べないため、レイアウト変更への柔軟性はありません。導入前に運搬動線が将来にわたって変わらないかを確認する必要があります。

主な用途: 機械への材料投入、トラックの積み下ろし場、金型の出し入れ、メンテナンス用の吊り上げ設備など。

天井クレーン

建屋の柱や梁に設置されたランウェイ(走行レール)の上を、クレーン本体が走行する形式です。

構造と動作: 「走行」「横行」「巻上」の3方向に動くため、建屋内をほぼ「面」でカバーできます。4形式のなかで最も汎用性が高く、工場の基幹的な搬送設備として使われます。

つり上げ荷重の目安: 0.5t程度の小型から、製鉄所などで使われる数百t級まで幅広く対応します。

メリット: 床面にレールや支柱が不要なため、生産設備のレイアウトを妨げません。工程の変更にも柔軟に対応できます。

注意点: クレーンの荷重を建屋そのものが負担するため、既存建屋への後付けでは建屋の構造強度の確認が不可欠です。ランウェイの新設や補強が必要になれば、工事規模は大きくなります。

主な用途: 機械加工工場、鉄工所、組立ライン、資材倉庫など、建屋内で広範囲に重量物を扱う現場。

門型(橋形)クレーン

天井クレーンの両端に脚を付け、床面や地面に敷設したレールの上を走行する形式です。片側だけ脚があり、もう一方は建屋の梁に載る「半門型(セミゴライアス)」もあります。

構造と動作: 天井クレーンと同様に「走行」「横行」「巻上」の3方向に動きますが、建屋の構造に頼らず自立している点が決定的な違いです。

つり上げ荷重の目安: 数tから数十t級まで。屋外の大型ヤードでは、さらに大きなものも使われます。

メリット: 建屋にクレーン荷重をかけないため、既存建屋の強度が不足している場合や、そもそも屋根のない屋外の資材ヤードでも設置できます。建屋の建て替えを伴わずに重量物対応を実現できる選択肢です。

注意点: 床面のレール敷設と、それを支える基礎工事が必要になるため、初期の工事規模は大きくなります。また床面をレールが横切るため、フォークリフトや台車の動線と干渉しないかを事前に検討する必要があります。屋外に設置する走行クレーンには、風による逸走を防ぐ装置も求められます。

主な用途: 屋外の資材ヤード、鋼材置場、コンテナヤード、建屋の強度が確保できない工場など。

ジブクレーン

支柱から水平または斜めに伸びた腕(ジブ)が旋回する形式です。壁面に取り付ける「壁クレーン(ウォールクレーン)」、柱に取り付ける「柱上式」、床に自立させる「ポスト式」などがあります。

構造と動作: 「旋回」と「巻上」、ジブに沿ったホイストの移動によって、支柱を中心とした円形の範囲をカバーします。

つり上げ荷重の目安: 0.25t〜2.8t程度の軽荷重帯が中心です。

メリット: 設置面積が小さく、1台の工作機械やひとつの作業ステーションの周囲だけをピンポイントでカバーできます。天井クレーンが設置された工場でも、頻繁な小口作業をジブクレーンに分担させることで、天井クレーンの待ち時間を減らせます。

注意点: 4形式のなかで唯一、転倒するおそれのある形式です。そのため後述する落成検査の内容も他の3形式とは異なり、自立式では床面の基礎補強が必要になります。

主な用途: 機械への段取り替え、溶接作業場、組立ステーション、天井クレーンの補助設備など。

4形式の比較一覧

「線で運ぶか、面で運ぶか、円で運ぶか」――この一点だけでも、候補は大きく絞り込めます。

つり上げ荷重で変わる届出・検査・資格

4形式のいずれを選ぶ場合でも、つり上げ荷重によって必要な手続きが変わる点は共通です。ここを見落とすと、設置後に思わぬ手戻りが発生します。

つり上げ荷重0.5t未満

労働安全衛生法上の「クレーン」に該当しないため、設置届・設置報告書は不要です。ただし安全に使用するための管理は当然必要です。

つり上げ荷重0.5t以上3t未満

所轄の労働基準監督署長にあらかじめ「クレーン設置報告書」を提出します。運転には特別教育の修了が必要です。

つり上げ荷重3t以上

工事開始の30日前までに「クレーン設置届」を提出し、設置後は落成検査を受けてクレーン検査証の交付を受けます。以降は原則2年ごとの性能検査が必要です。運転にはつり上げ荷重5t以上でクレーン・デリック運転士免許(床上操作式は技能講習)、0.5t以上5t未満で特別教育が求められます。あわせて、玉掛け作業についてもつり上げ荷重1t以上は技能講習の修了が必要です。

ここで、形式の違いが検査内容に直結する点を押さえておきましょう。落成検査では、天井クレーンや橋形クレーンのように転倒するおそれのないクレーンは荷重試験のみで足りますが、ジブクレーンのように転倒しうる形式では荷重試験に加えて安定度試験も必要になります。同じつり上げ荷重でも、形式によって検査の準備工数が変わるということです。

3つの質問で選ぶ最適なクレーン

自社に適した形式は、次の3つの質問に順に答えることで絞り込めます。

質問1:荷を運びたい範囲は「線」か「面」か「円」か 決まった一直線ならテルハ、建屋内を広くカバーしたいなら天井クレーンか門型クレーン、一台の設備の周囲だけならジブクレーンが候補になります。

質問2:設置場所は建屋内か、屋外か 屋外の資材ヤードであれば、選択肢は実質的に門型クレーンに絞られます。

質問3:建屋はクレーンの荷重を負担できるか 建屋内で面をカバーしたい場合、建屋の構造強度が確保できれば天井クレーン、不足していて補強も現実的でなければ門型クレーンという判断になります。この確認には図面の確認と現地調査が必要です。

導入前に必ず確認しておきたい3つのポイント

形式が固まったあとも、着工前に詰めておくべき実務上の論点があります。

建屋の構造強度とランウェイの支持方法

天井クレーンでは特に重要です。既存図面が残っていないケースも多く、現地での実測調査が前提になります。ここが不十分なまま進めると、工事途中での設計変更につながります。

電源・給電方式

キャブタイヤケーブル方式か、トロリ線方式かによって、必要な電気工事の内容と費用が変わります。既設の電源容量で足りるかもあわせて確認が必要です。

既存設備との干渉

照明、配管、ダクト、シャッター、換気設備などとの干渉は、現場では非常に多いトラブル要因です。クレーンの走行範囲と揚程を、周辺設備を含めた立体で確認しておく必要があります。

導入後は形式を問わず定期点検が義務

どの形式を選んだ場合でも、設置後は法令に基づく点検が義務付けられています。作業開始前点検、1か月以内ごとに1回の月例自主検査、1年以内ごとに1回の年次自主検査という3段階の体制を整え、記録を残す必要があります。

点検の具体的な項目やチェックポイントについては、天井クレーンの種類と定期点検の実施要領で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

まとめ

天井クレーン、テルハ、門型(橋形)クレーン、ジブクレーンは、法令上いずれも並列の形式であり、どれが上位・下位という関係ではありません。選定の出発点は「荷を運ぶ範囲が線か、面か、円か」であり、そこに設置場所(屋内か屋外か)と建屋の構造強度という条件を重ねることで、自社に適した形式は自ずと絞り込まれます。

そのうえで、つり上げ荷重に応じた届出・検査・資格の要件を満たし、導入後は形式を問わず定期点検を継続すること。この2点を押さえることが、現場の安全と設備の長寿命化につながります。

広島岡山工場工事・保全センター.comでは、ホイスト・クレーン・チェーンブロックの点検・新設・更新に対応しております。「どの形式が適しているかわからない」「既存建屋に天井クレーンを後付けできるか知りたい」といった段階からのご相談も歓迎です。現場調査はご依頼後1〜3日、初期回答は2時間以内で対応いたしますので、お気軽にお問い合わせください。